WordPressの執筆をAIで革新する:無料・高機能なローカル執筆環境の作り方

「記事のアイデアが浮かばない」「面倒なタグ付けやSEO対策に時間を取られる」「WordPressの編集画面が使いにくい…」

そんな悩みを抱えるすべてのブロガーへ。本記事では、Googleの強力なAI「Gemini」と、自作のWordPress管理ツール「WpAiCli」を連携させ、あなたの執筆体験を根底から変える、完全無料で高機能なAI執筆環境の構築手順を解説します。

この環境はWindows, macOS, Linuxに対応しており、OSに縛られることなく、誰でもお気に入りの環境でAIのサポートを受けられます。面倒な作業はAIに任せて、あなたは「書く」という最も創造的な活動に集中しましょう。


この環境がもたらす3つのメリット

なぜ、わざわざローカルに執筆環境を作るのでしょうか?それは、WordPressの管理画面を遥かに超える、圧倒的な執筆体験が手に入るからです。

1. AIが優秀な執筆アシスタントになる

Googleの強力なAI「Gemini」を、コマンド一つで呼び出せます。無料枠でも1日に1,000リクエスト、一度に約2万文字(32,000トークン)もの長文を扱えるため、以下のような作業をAIに丸投げできます。

  • 記事のアイデア出し、構成案の作成
  • 長文記事のリライトや要約
  • SEOキーワード、抜粋、タグの自動生成
  • 全記事を対象にした誤字脱字のチェック

2. 好きなツールで快適に執筆できる

この環境は、特定のOSやエディタにあなたを縛り付けません。

  • エディタの自由: 使い慣れたエディタ(Visual Studio Codeなど)で執筆に集中できます。VS Codeなら、Markdownをリアルタイムでプレビューしながら書いたり、ターミナルで直接AIに指示を送ったりと、シームレスな作業が可能です。
  • マルチプラットフォーム: Windows, macOS, Linux、どのOSでも同じ環境を構築できます。

3. Gitで安全・確実なバージョン管理

WpAiCliが作成する記事のキャッシュフォルダをGitで管理することを強く推奨します。これにより、以下のようなメリットが生まれます。

  • 変更履歴の保存: すべての記事の変更履歴が残るため、いつでも過去の状態に復元できます。
  • 安全なバックアップ: GitHubなどのリモートリポジトリにプッシュしておけば、PCが故障しても記事データが消えることはありません。

AI執筆環境の構築手順

それでは、実際に環境を構築していきましょう。

ステップ1: WordPress側の準備

まず、WpAiCliがあなたのWordPressサイトと通信するための準備をします。

アプリケーションパスワードの発行(推奨)

WpAiCliはWordPressのREST APIを利用します。認証には、簡単で安全な「アプリケーションパスワード」を使いましょう。

  1. WordPress管理画面の「ユーザー」>「プロフィール」に移動します。
  2. 「アプリケーションパスワード」セクションで、「新しいアプリケーションパスワード名」に WpAiCli など分かりやすい名前を入力し、「新しいアプリケーションパスワードを追加」をクリックします。
  3. 生成されたパスワード(例: xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx xxxx)が表示されます。このパスワードは一度しか表示されないため、必ずコピーして安全な場所に保管してください。
  4. 重要: コピーしたパスワードに含まれるスペースをすべて削除し、連続した文字列(例: xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx)にしておきます。

WordPressのアプリケーションパスワード生成画面

Markdown編集の有効化(任意)

Markdownで記事を書きたい場合は、専用のプラグインを導入します。

  1. プラグインのエクスポート: ターミナルで wpai export-plugin を実行し、mu-plugins.zip を生成します。
  2. プラグインの役割: このzipファイルには、AIがMarkdownを読み書きできるようにする markdown-meta.php と、WordPress管理画面でもMarkdownの同期を保つ md-source-sync.php が含まれています。
  3. サーバーへの設置:
    • FTPソフト等でサーバーに接続し、wp-content ディレクトリの中に mu-plugins ディレクトリを作成します(もしなければ)。
    • mu-plugins.zip を解凍し、中身のファイルをすべて wp-content/mu-plugins/ にアップロードします。
      > リスクについて: サーバーにファイルを追加することに不安があるかもしれません。導入は自己の責任においてご判断ください。

ステップ2: 必須ツールのインストール

次に、ローカルPCに必要なツールをインストールします。

  1. Node.js (バージョン18以降): 公式サイトからダウンロードしてインストールします。
  2. Gemini CLI: ターミナルで以下のコマンドを実行します。
    bash
    npm install -g @google/gemini-cli

    初回実行時にGoogleアカウントでの認証が必要です。
  3. .NET SDK (バージョン9.0以降): .NET公式サイトからダウンロードしてインストールします。
  4. WpAiCli: ターミナルで以下のコマンドを実行します。
    bash
    dotnet tool install --global WpAiCli

ステップ3: AIによる初期設定

いよいよAIに初期設定を依頼します。

  1. まず、記事を管理するフォルダをPC上に作成し、ターミナルでそのフォルダに移動します。(例: cd ~/Documents/MyBlog
  2. gemini と入力し、AIとの対話を開始します。
  3. AIにツールの仕様を理解させるため、以下のプロンプトを送信します。
    wpai -h コマンドでこのプログラムの仕様を把握してください。
  4. 最後に、あなたのブログ情報を伝えて、接続設定コマンドを生成してもらいます。{} の部分をあなたの情報に書き換えて送信してください。
    接続情報を追加してください。
- ブログ名: {あなたのブログを識別する好きな名前} - エンドポイント: {あなたのWordPressサイトのURL}/wp-json - ユーザー名: {あなたのWordPressユーザー名} - パスワード: {ステップ1で準備したスペース削除済みのアプリケーションパスワード}

AIが生成した wpai connections add ... コマンドを実行すれば、接続は完了です。

ステップ4: Gitでのバージョン管理設定

安全な執筆環境のため、Gitでバージョン管理を始めましょう。

  1. Gitリポジトリの初期化:
    記事を管理するフォルダ(例: MyBlog)の直下に、wpaiがキャッシュを作成するフォルダ(例: wp-cache)ができます。この wp-cache ディレクトリをGitで管理します。
    bash
    cd wp-cache
    git init
  2. .gitignore の作成:
    リポジトリに不要なファイルを含めないため、wp-cache ディレクトリ直下に .gitignore ファイルを作成し、以下のように記述します。

    # 他のブログのキャッシュフォルダを除外
    another-blog/
    
    # OSが自動生成するファイルを除外
    .DS_Store
    
    # WpAiCliが使用するデータベースファイルを除外
    **/wp-ai-cache.db
    
    # 画像ファイルを除外し、メタデータ(.yaml)のみを追跡
    sample-blog/media/*.png
    sample-blog/media/*.jpg
    sample-blog/media/*.jpeg
    sample-blog/media/*.gif
    

動作確認

wpai posts sync を実行し、wp-cache フォルダ内に記事のMarkdownファイルが生成されれば、セットアップは成功です!


実践的なAI活用例:全下書き記事の抜粋を自動生成

この環境に慣れるため、簡単ながらも効果の大きいAIへの依頼を試してみましょう。ここでは、「溜まっている下書き記事すべての抜粋を、AIに考えさせて設定してもらう」というタスクを実行します。

1. AIへの依頼

Gemini CLIとの対話画面で、以下のプロンプトを送信します。

posts/draft/ ディレクトリにあるすべての下書き記事を読み込んでください。
それぞれの記事について、本文の内容を要約し、最も魅力的になるような120文字程度の抜粋(excerpt)を生成してください。
生成した抜粋を、各ファイルの `excerpt:` の部分に設定してファイルを更新してください。

2. AIの処理フロー

この指示を受け取ったAI(Gemini)は、以下のように動作します。

  1. 指定された posts/draft/ ディレクトリ内のすべてのMarkdownファイルを探索します。
  2. 各ファイルを開き、---で区切られたフロントマター(メタデータ)と本文を読み込みます。
  3. 本文の内容を理解し、要約して、SEOや読者の興味を引くような抜粋を生成します。
  4. 元のファイルの excerpt: '' となっている箇所を、AIが生成した抜粋で置き換えて、ファイルを上書き保存します。

この間、あなたはただ待っているだけでOKです。

3. 変更をWordPressに反映

AIがすべてのファイルの更新を終えたら、最後に以下のコマンドを実行するようAIに指示するか、あるいはご自身で実行してください。

wpai posts push --all

このコマンド一つで、AIが変更したすべての下書き記事の情報が、一括であなたのWordPressサイトに反映されます。

このように、定型的で少し面倒な作業をAIに丸投げすることで、あなたはより創造的な執筆活動に集中できるのです。


AIでもっと加速するブログ運用

セットアップが完了した今、あなたはAIという強力なパートナーを得ました。最後に、さらなる活用アイデアをいくつか紹介します。

  • SEO対策の自動化: 全記事のSEOキーワードやメタディスクリプションをAIに生成・設定させる。
  • カテゴリ・タグの最適化: 全記事の内容をAIにレビューさせ、不適切な分類を修正したり、新しいタグを一括で付与する。
  • 内部リンクの自動提案: 新しい記事に関連する過去記事をAIに探し出させ、内部リンクの設置案を提示させる。
  • シリーズ記事の作成支援: 複数の関連記事から、それらをまとめた総集編や目次記事の草案をAIに作らせる。
  • 記事の多言語翻訳: 既存の記事を、AIに指定した言語へ翻訳させ、多言語サイト展開の足がかりにする。
  • 誤字脱字の横断的チェック: すべての公開済み記事を対象に、誤字脱字や表現の揺れがないかをAIにチェックさせ、修正案をリストアップさせる。

快適なAI執筆ライフをお楽しみください!�みください!