導入:なぜ開発者がRTX5090を?
私は開発者という立場から、昨今流行りのAIを業務システムにうまく組み込めないか、日々模索しています。
システムからAIを利用する場合、通常は従量課金のAPIを契約する必要があります。しかし、この有料クラウドAPIを使わず、ローカルPCをAIサーバーに見立ててプログラムから呼び出せば、ランニングコストは電気代のみで使い放題になります。
この「ローカルAI環境の構築」こそが、高性能グラボ入手への第一歩でした。
40万円超えの買い物を正当化する「言い訳」
いくら業務用途とはいえ、40万円を超える買い物は流石に勇気がいります。
私の場合、購入を後押しする「費用対効果」として、以下の用途も見込んでいました。
1. 動画編集(喫緊の悩み)
私は動画編集でクロマ4:2:2圧縮方式の動画ファイル(例えばHLG撮影素材など)を扱うことが多いのですが、これが悩みのタネでした。
使っていたRTX4000番シリーズは、この圧縮方式のハードウェアデコードに対応しておらず、CPUデコードにフォールバックしてしまいます。結果、Davinci Resolveの動作が「めちゃくちゃ重い」状態でした。
この用途から「いずれRTX5000番シリーズが欲しいなぁ」とは常々思っていたのです。
2. PCゲームと資産の有効活用
私はPCゲームも嗜む程度にプレイするため、プレイ体験が底上げされることへの期待もありました。
加えて、もともと使っていたグラボ(RTX4060ti 16GB)を妻のPCに換装して有効活用できる、という点も大きかったですね。
購入までの道のり:天国と地獄
2025年の初頭に発売されたRTX5090ですが、ご存じの通り、中国への半導体輸出規制や世界的な品薄で、発売当初の市場はかなり荒れていました。
9月頃になり、ようやく価格が「妥当」と呼べる水準に落ち着き始めたため、私も日々価格をチェックしていたのです。
地獄:Amazonアウトレットの悪夢
ある日、Amazonアウトレットで「MSI RTX5090 VANGUARD」が約400,000円で売られているのを発見しました。実売500,000円前後の品がこの値段です。「めちゃくちゃお得なのでは? しかもAmazonの整備品なら返品も安心かな?」と、思わず飛びついちゃいました。
結果から言うと、これは「箱だけRTX5090 VANGUARDで、中身はRTX5080 VANGUARD」という悪質な偽装品でした。
このMSIのVANGUARDシリーズ、見た目がほぼ同じで「5090の方が少し分厚くて重たい」という程度の差異しかありません。初見での見分けは素人には不可能です。
さらに悪質なことに、本体のシリアルナンバーステッカーはRTX5090のものに貼り替えられていました。騙す気満々です。(Amazonも被害者なのでしょうけど。そう信じたい。)
返品・返金もスムーズには進まず、最初はなぜか「半額返金」の処理に。残り全額を返金させるために、何度サポートに電話をかけたことか……。
ヘタをすると私がすり替え犯と疑われる可能性もあったため、念のために「ノーカットの開封動画」を撮っておいたのは本当に正解でした。これは高額商品を買う際の鉄則かもしれません。
天国:幸運な巡り合わせ
この返品返金手続きと並行しつつ、私はRTX5090の価格調査を続けていました。
すると今度は、Joshinで新品の「GeForce RTX™ 5090 32G VENTUS 3X OC」が398,000円で販売されているのを発見。
当時の相場価格が410,000円くらいでしたから、この時点ですでに1万円以上安い状態です。
「え、安すぎないか?」と思ったら、なんと購入のタイミングで、さらに2万円引きのクーポンが適用されました。
神かっ!
最終的に、相場から実質3万円以上も安く買えたことになります。
Amazonでのトラブルは散々でしたが、そのおかげでこの奇跡的なタイミングに巡り会えたのは、結果的に幸運でした。
実践投入:グラボの性能と新たなボトルネック
私のマシンは、グラボだけが突出していて、その他パーツはコスパ重視の構成です。
それでも、Davinci Resolveの編集快適性という意味では、もはや「性能的に頭打ちかな?」と感じるほど快適になりました。
ただし、注意点があります。
高性能グラボあるある:ストレージがボトルネックになる
キャッシュディレクトリに高速書き込みが可能なSSD(最低でもPCIe Gen4)を指定しないと、グラボのレンダリング速度がストレージの書き込み速度を上回ってしまい、性能を全く活かせません。
PCIe Gen4のSSDにキャッシュフォルダを指定していますが、快適そのものです。
ゲームでの発見:「大は小を兼ねる」エコ運用
性能と消費電力のジレンマ
私のCPUはRyzen 5700xで、それほど高性能ではありません。
それでも、『モンハンワイルズ』のような重量級ゲームのベンチマークでも、満足のいくスコアが出ます。
ただ、ゲームによっては気になる挙動がありました。
例えば『Cyberpunk 2077』などは、与えられたPC性能をすべて使い切ろうとします。特に、私のディスプレイのリフレッシュレートは165Hzなのに、それを遥かに超える無意味な高フレームレートで動作しようとするのです。
当然、グラボ単体の消費電力も400W近くまで跳ね上がります。「消費電力がっ!」と悲鳴を上げたくなるレベルです。
解決策:DLSSフレーム生成の「制御」
どうやらこれは、DLSSフレーム生成を有効にしていると発生する現象のようでした。
ChatGPTに相談したところ、「DLSSを有効にしつつ、実効フレームレートが165FPS(リフレッシュレート)以下になるように調整するのがエコだ」と教わりました。
そこで、私の環境では以下のように設定してみました。
- ゲーム内のFPS上限を「30」に設定。
- DLSSフレーム生成をONにする。
すると、フレーム生成のブーストが効き、実効フレームレートは100〜150FPSの範囲で完璧に安定しました。
そして肝心の消費電力は、200W未満にまで激減。
これならミドル帯のグラボ(RTX5060とか5070)と変わらない、かなりエコな運用です。
結論:高性能グラボは「静音パーツ」だった
「なら最初からRTX5060とかを使えばいいじゃないか」と言われると、ご尤もです。
しかし、RTX5090には決定的な違いがあります。それは、構造上のヒートシンクの体積と質量です。放熱性能が下位モデルとは段違いなのです。
このお陰で、200W未満といったエコ運用であれば、GPU温度は室温プラス20℃程度の上昇に抑えこめます。
そして何より、空冷ファンがほぼ無音です。静か。
「高性能グラボ=描画性能と引き換えに、爆音・爆熱・高消費電力」という印象でしたが、設定次第では「大は小を兼ねる」使い方で、私のようなライトゲーマーでも非常にエコに扱える、というのが最大の気づきでした。
追記:パソコンは「欲しい時が買い時」
改めて振り返ると、私が「GeForce RTX™ 5090 32G VENTUS 3X OC」を購入したのは2025年9月頃のことでした。
今思えば、あのタイミングは世界的なDRAM価格高騰が始まる直前であり、まさにベストタイミングだったと言えます。
なぜなら、この記事を書いている2025年12月現在、私が購入したのと同じモデルの実売価格は10万円以上も値上がりしており、とてもではありませんが手が出せない状況になってしまったからです。
ちょっとしたタイミングの差で、これほど状況が変わってしまうとは……。
AmazonでのトラブルやJoshinでのクーポンなど、紆余曲折ありましたが、結果としてあの時決断して本当によかったと思います。
やはり、古くからの格言通り「パソコンは欲しい時が買い時」ですね。
Auto Amazon Links: プロダクトが見つかりません。
