【雑感】身売り間近のGoPro。中国勢の台頭だけではない、自ら招いた「凋落の構造」

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【雑感】身売り間近のGoPro。中国勢の台頭だけではない、自ら招いた「凋落の構造」

先日、GoProが最新機種に対する「MISSION 1」の100ドル値引きセールを開始した。半導体素材が高騰し、売れば売るほど限界利益が厳しくなるこの状況下での大幅値引きだ。
身売り交渉が最終段階に入ったというニュースも出ている中で、これは買収先へのキャッシュフローを健全に見せかける窓飾りなどではなく、買収完了まで会社を存続させるための「ギリギリの延命措置(当座の運転資金の確保)」なのだろう。

GoProの凋落を語る際、DJIやInsta360といった中国メーカーの台頭が原因として挙げられることが多い。確かに競合にシェアを奪われたのは事実だが、果たしてそれだけで倒産直前まで追い込まれるものだろうか。
個人的には、GoProが今の窮地に陥った根本原因は、競合の存在以前に「自ら積み重ねた失敗と怠慢」にあると考えている。

「やらなくてよかった失敗」と「やらなかった事による失敗」

Karmaドローンなど、巨額の開発費を投じてブランドの信用を失った大惨事は「やらなくてよかった失敗」の筆頭だ。しかし、それ以上に深刻だったのは、アクションカメラの要である「システムの安定化」という、やらなければならない事を長年放置し続けたことだ。
HERO7のHyperSmoothで一時的に盛り返したものの、それ以降、GoProは何一つ正しい手を打てていないように思える。

熱心なファンを切り捨てた「USBポートの不安定さ」

最も致命的だったのは、初期モデルから引きずり続けた「USBポート利用時の不安定さ」だ。
外部マイクや外部給電、システムとの連携など、USBポートや純正オプションを駆使して高度な運用を行うのは、インフルエンサーやアーリーアダプターといった熱心なファン層である。

メディアモジュラーで音が取れていない、純正グリップのVolta使用時にVoltaごとクラッシュするといった不具合は、普通のユーザーでも一通り体験するだろう。しかし、私がGoProのシステム的な限界を最も痛感したのは、サードパーティー製のリモコンアプリを開発し、実機テストを行っていた時のことだ。

開発中、動作検証のためにGoProをコンセントからの常時給電状態にし、100時間を超えるテスト稼働を行った。その際、定期的に「物理的にバッテリーを抜き差しして強制リセットをかけないと、一切の操作を受け付けなくなる状態」に幾度となく陥った。外部からのリモート制御や常時給電という運用において、ファームウェアレベルで完全にデッドロックを起こしてしまうのだ。

また、ある程度の自己解決能力がある私ですら、GoProを使うためには「撮影前にプリセットを作り込み、使用中に細かい設定変更は極力しない」「充電は外部充電器で行う」「そもそもクラッシュの元凶になるUSB接続の外部機器は使わない」といった暗黙のマイルールを強いる必要がある。腫れ物に触るように運用しなければならないカメラが、果たして本当にコンシューマー向けなのだろうか。

彼らが現場で「GoProは周辺機器周りの接続が不安定で、本番で信頼できない」という烙印を押してしまった影響は計り知れない。自らのブランドアンバサダーとも言えるコア層を失望させ、DJIなどの安定したエコシステムへ乗り換えさせる隙を自ら作ってしまった。

HERO12での「GPS廃止」という強烈な裏切り

さらに私個人として最も失望したのが、HERO12でのGPS機能の廃止だ。
GoPro側はバッテリー駆動時間や熱対策を理由にしていたが、スマートウォッチの挙動を見ても分かる通り、GPS単体の発熱などたかが知れている。本当に熱対策を謳うのであれば、システムのデフォルト設定をOFFにして出荷し、必要なベテランユーザーにだけ任意でONにさせれば済む話だ。

それをハードウェアレベルで削り落としたのは、単なるBOMコストの削減であり、ユーザーへの責任転嫁という詭弁に過ぎない。速度や高度、軌跡といったテレメトリーデータを映像に載せるという「アクションカメラならではの存在意義」を自ら捨て去ったこの判断は、既存ユーザーへの強烈な裏切り行為だった。

熱暴走は本質ではない。HERO7がもたらした「Vlogの呪い」

世間一般でGoProの最大の弱点として語られる「熱暴走」だが、個人的にはこれ自体はそこまで大きな問題ではないと思っている。極小サイズの筐体で高画質の映像処理を行えば、同程度のスペックを持つカメラなら物理的にどれも同じように発熱する。

本来、GoProはエクストリームスポーツ向けのカメラだ。バイクやサーフィンなど、常に風を受け続ける環境や水中であれば熱で落ちることはまずない。問題なのはカメラの排熱性能ではなく、HERO7の時代に、過酷な環境向けのプロツールを無理やり「Vlog向け」として大衆に売り出した販売戦略にある。歩きながらの手持ち撮影といった風の当たらない用途で使わせれば、熱暴走するのは必然だ。

現在の中国メーカーは、チューニングをコンシューマーに全振りし、「スマートフォンで見た時に雰囲気として綺麗に撮れる」という体験価値の提供に徹している。これは見事な戦略の勝利だ。
一方のGoProは、このHERO7の時の成功体験が、今に至る呪いになっているように思えてならない。

本来であれば、レッドブルに提供するような一切妥協のない「完全なプロ向けモデル(堅牢な放熱設計とI/Oの絶対的な安定性)」と、スマホ連携や手軽さを最優先した「コンシューマー向けモデル」の2系統を出すべきだったのではないか。
一つの筐体に相反するニーズを詰め込もうとした結果、プロからは機材として信頼されず、一般層からは熱で止まって使いにくいと言われる中途半端な立ち位置に陥ってしまった。

まとめ

アクションカメラというジャンルを開拓し、一時代を築いたメーカーがこのような結末を迎えようとしているのは非常に寂しい。
しかし、ターゲット層の定義を見誤り、システムの基礎的な信頼性(I/Oや熱設計)を後回しにし続けた代償はあまりにも大きかった。今回の買収劇がどのような結末を迎えるのか、一人の元・熱心なユーザーとして見守りたいと思う。

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